日本ICOMOSフォーラム「英仏版の比較検討から読み直すベニス憲章の意義」開催報告


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日本ICOMOSフォーラム「英仏版の比較検討から読み直すベニス憲章の意義」開催報告

Report on the Japan ICOMOS Forum: "Revisiting the Significance of the Venice Charter through a Comparative Study of the English and French Versions"

第1(憲章)小委員会 1st Sub-committee of ICOMOS Japan

フォーラム会場の様子
フォーラム会場の様子

2024年8月31日の午後、東京・新丸ビル10階の京都アカデミアフォーラムにて、第1(憲章)小委員会WGの企画による日本ICOMOSフォーラム「英仏版の比較検討から読み直すベニス憲章の意義 〜その採択から60年を迎えた日本の実践〜」を開催しました。前日からの台風10号による影響のため、急遽、オンラインを併用したハイブリッド形式に変更し、予定通りのプログラム[1]を終了することができました。

[1]当日のプログラム

主催者側を含めた来場参加者は51名、オンライン参加者は27名を数え、開催の前後や休憩時間にも、多くの方々が言葉を交わし、親密な雰囲気と交流の生まれた場となりました。ご多用の中、ご参加いただきました皆様方と、コメンテーターとしてご来席いただきました稲葉信子先生、吉田鋼市先生に、改めて深く感謝を申し上げます。

このフォーラムは、2022年10月に同委員会内に設置されましたWG[2]による活動成果として、1999年報告書版[3]の日本語訳改訂案に関する中間報告と、この作業を通じて見えてきた課題に関する意見交換を目的としたものです。後半のディスカッションでは、(1)ベニス憲章の今日的意義と(2)日本における今後の実践について、それぞれ3名のメンバーよる話題提供をもとに、ディスカッションを行いました。

[2]ベニス憲章の日本語訳の見直しに係る第1小委員会WGの取り組みについて 研究会

[3]文化遺産保護憲章研究検討報告書

議論の主軸となったのは、建築都市遺産の保存と修復に関する厳格な「ルール」と捉えられがちであったベニス憲章が、国際的に従うべきものというよりはむしろ、過去からのメッセージを未来の世代へと受け渡していくことへの、連帯と責任の自覚を促す「精神」であることに、改めて気付かされたという点でした。日本を含む多様な文化遺産に向き合う中で、この憲章を私たちがどのように受けとめ、未来に向けて、どのように発信していくかが、次なるテーマとなります。

フォーラムの詳しい報告と、WGの作業成果を取りまとめた報告書・事例集の刊行は、本年末頃に予定しています。今回、集まってくださった皆様方のご意見も取り込みながら、さらなる検討を続けて参りたいと思います。

なお、このイベントは、2023年度「公益信託大成建設自然・歴史環境基金」の助成により実現したものです。記して感謝申し上げます。

(文責:佐藤 桂)