エミリア・ロマーニャ州とボローニャ大学(伊)共催の地震と文化遺産に関する国際講演会について(2026年3月)


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エミリア・ロマーニャ州とボローニャ大学(伊)共催の地震と文化遺産に関する国際講演会について(2026年3月)

Post-Earthquake Management. From Emergency Response to Future Preparedness, International Conference, Bologna, Italy, March 2026

ウーゴ ミズコ Mizuko UGO

日本の事例を紹介
日本の事例を紹介

2026年3月4日に、エミリア・ロマーニャ州災害復興庁(MADLab-ER)とボローニャ大学の共催で、国際講演会「震災後の管理―次の震災に備えるために―」が行われた。講演会は、ボローニャ市のエミリア・ロマーニャ州本部(丹下健三設計のフィエラ地区、Fiera District内、1972~1994年)にある「2012年の地震の犠牲者へ」に捧げられた会場で行われ、SIRA(スィーラ、イタリア建築保存修理協会)、イタリアICOMOS、ISI(イースィ、イタリア耐震補強エンジニアリング協会)の後援、イタリア建築家エンジニア協会も参加した。

2012年5月から6月にかけて、イタリア中部エミリア・ロマーニャ州、イタリア北部ロンバルディア州とヴェネト州に断続的に地震が起こった。中でも、5月20日と29日にマグニチュード5.9と5.8の地震が、特にエミリア・ロマーニャ州に大きな被害を与えた。28名の死者、数百名の負傷者が出たほか、15,000人以上が住まいを失った。住宅以外に、産業関連施設と農業施設が崩壊あるいは半壊し、歴史的建造物が被害を被った。世界遺産で言えば、マントヴァ市とサビオネータ市(2008年に登録)、フェッラーラ市(1995年に登録)、州都のボローニャ市(2021年に登録)において、歴史的建造物に多くの被害が見られた。これらの地域には活断層の存在、12世紀以降マグニチュード5以上の地震が複数起きたことが知られるが、とくに1570年の地震の被害が大きかったと記録されている。今回の地震では、鉄筋補強のない煉瓦造であった教会や鐘楼に崩壊や大きな損傷が確認された。これらの地域が他の地域と比較し著しく地震のリスクが高いわけではないものの、農業建築や歴史的建造物に耐震補強がなく脆弱だったことが被害の主な原因とされた。

1570年のエミリア・ロマーニャ州の地震

(出典:Pierre Boaistuau(著)「HISTOIRES DE TREMBLEMENT EFFROYABLE de terre advenu en la cité de Ferrare & environs en l’an 1570」『Histoires prodigieuses』Charles, Macé , Paris, 1575年、 第43章、138頁)

地震から13年後の2025年に、緊急事態はようやく解除された。震災復興事業としての被災者の住宅再建の課題は解決に向かっているものの、被災歴史的建造物の保存修理は遅れている。だが地震後、保存修理工事に加え、エミリア・ロマーニャ州は様々なかたちで、文化資源の震災復興に取り組んできた。例えば、災害に対する現地住民の意識を高めるための交流イベントの開催や、歴史的建造物に残存する過去の地震の痕跡調査研究、復元に関する研究の出版支援等である。さらに、エミリア・ロマーニャ州災害復興庁(MADLab-ER)が州内の四つの大学と共同企画した「2012年の地震からの教訓」と題した四つの講演会シリーズ(2025年10月から2026年4月)を企画し、それぞれ、文化遺産の被害調査(パルマ市)、震災復興における文化遺産の保存修理の役割(フェッラーラ市)、文化遺産の震災復興に関わる法的仕組みや支援(ボローニャ市)、世界遺産のモニタリング(モデナ市)、というテーマを取り上げた。今回の講演会は、その中の三つ目で、他の講演会とは異なり、海外の事例から学ぶことを目的に企画された点が特徴である。

四つの講演会チラシ

ボローニャ大学との共催である今回の講演会は、歴史的建造物保存修理の調査や耐震補強といった技術面の議論ではなく、地震直後の対策や現地住民との交流に関する制度や法的枠組み、支援の可能性と非営利団体の役割、震災復興における住民参加の仕組みについて可能性を探ることを目的とした。これまでの講演会シリーズにおいて、唯一海外の事例を中心に主題が設定され、イタリアをはじめ、日本、ネパール、アルジェリア、アルメニア、モロッコ、メキシコ、チリ、トルコ、アルバニア、イラクといった世界の多くの国々で文化遺産が直面している自然災害、被害と対策、そしてその課題が指摘された。筆者は、熊本地震後の対策形成に貢献した日本ICOMOSの活動を中心に、特に日本における被災歴史的建造物の復興の仕組みについて紹介した。そこでは、地震と火災の関係性、重文等の指定を受けていない歴史的建造物の保存における現地住民との関係に関心が向けられたように思う。

今回の講演会においては、歴史的建造物の震災復興以前に、まず住民が納得できるようなかたちで状況が説明されることの必要性が訴えられたように思う。頻繁に会合を開き、地震の詳細と被害状況の丁寧な説明に加え、住民の声に耳を傾けることが文化遺産を含む震災復興の第一歩であることが共通の認識とされていた。加えて、地域の人々が震災復興に積極的に参加しながら未来に向かって歩みを進めるためには、行政やNGOなどの対策や支援が個別に足し算として実施されるのではなく、全体が総合的なシステムとして調整・機能するような工夫の重要性も強く求められていた。

(学習院大学)