巻頭言(2026年夏号)
巻頭言(2026年夏号)
Foreword (Summer 2026)
岡田 保良 Yasuyoshi OKADA(日本イコモス国内委員会委員長)
ユネスコ世界遺産委員会と中東危機
今年の世界遺産委員会は、お隣の韓国プサンで7月に開催されます。日本から一覧表入りを目指す「飛鳥・藤原の宮都」が委員会で審査される予定で、お務め満了で日本は今年から委員国ではなくなることを懸念される向きもあるかもしれません。けれどもこのウェブInfo誌が公開される頃には、ICOMOSによる評価が公表されているはずですから、そのような心配は不要となることを期待したいものです。
私としては、世界遺産委員会がいまのイランをめぐる戦争被害に対してどのようなメッセージが発せられるか、あるいはないのか注目しています。というのも、UNESCOはすでにこの3月2日付で、テヘラン中心部にある世界遺産「ゴレスタン宮殿」が空爆の被害を受けたことに懸念を表明したものの、攻撃国への非難はあえて避けているように見るのです。ICOMOS本部はこれを受け、Statement on the Middle Eastを発出してUNESCO声明に対する全面支持を訴えるとともに、情勢の推移や文化遺産への影響を把握するための情報収集に着手しているとのことでした。
私たち日本イコモスでも、4月のアジア太平洋地域会議においてイラン・イコモスで旧知のM. ヘジャージー氏から短いながら生々しい現場写真を伴った報告に接することができました。同氏とは被災文化財支援特別委員会を通じて今後ともコンタクトを続けることになりそうです。
ICOMOS総会と役員選挙
既報の通り今年のICOMOS総会は10月にマレーシア、クチンを会場に開催されます。会期は15日からですが、議事については開催前および開催期間中にオンライン説明会および電子投票が実施される予定ですので、とくに投票権をお持ちの皆さまにはご注意をお願いします。また注目の役員選挙に関しては、立候補受け付けの一次締切までに届け出が受理された27名の候補者の経歴や豊富を含むプロファイルが、すでにGA2026ウェブサイト中Statutory Meetings & General Assemblyのページに掲載されています。ぜひご覧ください。任期満了のテレサさんに代わる会長職には二人の女性が意欲を示しており注目です。日本からは、これまで6年にわたってご苦労をおかけした大窪健之さんに代わって、20世紀遺産の分野で奔走されている山名善之さんがボードの候補に立たれました。日本イコモス全面支援でこの選挙に臨みたいと考えます。
総会につづく恒例のシンポジウムは目下アブストラクト審査の段階くらいでしょうか。シンポジウム全体のテーマは Living Heritage: Respect, Enhance, Accept, Partnership。14のセッションの中には、河野俊行さんのご尽力で、複数のISCと共同して昨年の群馬宣言に盛られた Heritage Ecosystems をキーとするセッションもあり、どんなペーパーが並ぶか楽しみです。
この総会とシンポジウムがICOMOSの次なる3年、あるいはその後の時代へ、不安定な世情を乗り越えるべく確実な飛躍を促す契機となることを切に祈ります。