2026年度 日本イコモス学生会員交流会
2026年度 日本イコモス学生会員交流会
ICOMOS Japan Student Membership Exchange Meeting in 2026
古賀 大智 Daichi KOGA
EP(若手専門家)委員会(以下、「EP」という。)は、国際記念物・遺跡の日(IDMS:International Day for Monuments and Sites)に合わせた、2026年4月18日に「2026年度日本イコモス学生会員交流会」を開催しました。EP主査山田大樹氏、EP幹事青山道乃氏のサポートのもと、古賀大智が企画・進行を行い、EP武藤美穂子氏にレクチャーをいただきました。

1.イベント概要
これまでEPは、学生を主なターゲットに据えた座談会や交流会を継続的に開催してきました。これら学生向けイベントは、会員・非会員を問わず文化遺産に興味のある学生間の交流を図り、学生会員を活発化させることを目的としています。
そして、今回の学生向けイベントでは、学生間の交流に加えて、近年話題になっている名古屋城天守の復元を題材としたレクチャー及びディスカッションを行いました。文化遺産保護の意思決定において何を優先させていくべきなのかという、普段の大学の講義ではあまり深くは立ち入らないような問いに対して、参加者の皆さんで議論する機会を設けようと考え、このテーマを選択しました。
2.交流会
イベントの前半では、日本イコモスやEP、学生会員について説明したのち、参加者の皆さんに自己紹介をしていただきました。当日は、学部3年生になり文化遺産について深く研究しようと志した学生から、博士課程の学生、修士課程を卒業し文化遺産保護の実務に携わり始めた方まで、想定を上回るたくさんの方にご参加いただき、この幅広い交流が皆さんにとって良い刺激になったことを願います。
所属や研究分野に加え、「推しの文化財・文化遺産」についても発表していただいたのですが、普段から文化財を身近に感じていることが伝わってくる、素敵な自己紹介の数々でした。
3.レクチャー及びディスカッション
イベントの後半では、近年話題になっている名古屋城天守の木造復元におけるエレベーター設置問題について、EP武藤美穂子氏にレクチャー(「“本物”とは何か-名古屋城にみる再建と復元の境界」)をいただきました。名古屋城整備の沿革や文化財指定の範囲、そして、エレベーター設置問題の経緯など、学生たちが文化遺産の「復元」について考えることができる材料を与えてくださいました。
その後、参加者を2つのグループに分けてディスカッションを行いました。
「天守を木造復元する目的は何なのか、その目的に合わせた方向性でいくべき」「天守、城郭とは本来障壁のある施設であった」「史実通りの復元であると、研究の場としても活用できうる」「まちのシンボルとして万人に開かれたものであるべき」「天守に対する住民の思いを大切にしなければならない」「天守からの景観もその文化財が持つ一つの特徴である」「他の復元事例を参考にして検討すべき」「未来を見据えた、時代に即した文化遺産保護でなければならない」「エレベーター設置もその文化財の歴史の一部となる」「コストや耐久性など、文化遺産分野だけでなく多角的な視点で議論する必要がある」「未来におけるバリアフリーのかたちは進歩しているだろう」
といった、学生たちの意見が活発に交わされました。学生たちの中には、レクチャーや他の方の意見を受けて、当初の考えから揺らぐ方もいました。
ディスカッションでは、名古屋城天守のエレベーター設置問題に対する関心の高さがうかがえたとともに、文化遺産に対する皆さんの熱い思いが感じられました。限られた時間ではありましたが、正解のない問いに対して皆さんが積極的に発言してくださり、密度の濃い有意義な時間であったように思います。また、文化遺産といえども多くの要素が絡み合っているため、様々な視点からこの問題について議論できたことは、私自身も視野が大きく広がることとなりました。
(あとがき)
最後に、参加してくださったメンターの岡田先生をはじめ参加者の皆さん、レクチャーしていただいた武藤さん、企画・運営をサポートしていただいた山田さんと青山さん、この度は本当にありがとうございました。このイベントを通して、4年弱お世話になった学生会員に何らかの還元ができていれば幸いです。