立山砂防の世界遺産登録に向けたフィールドスタディ
立山砂防の世界遺産登録に向けたフィールドスタディ
Field Study for the World Cultural Heritage Registration of Tateyama Sabo
土居 洋子 Yoko DOI/島田 修一 Syuichi SHIMADA/笹島 由成 Yusei SASAJIMA
■はじめに
富山県の常願寺川流域の砂防事業(立山砂防)は、本年、県営事業着手120年、国直轄事業着手100年の節目を迎えています。
富山県では、関係機関や民間団体等との連携の下、常願寺川流域の歴史的砂防施設群を中心に据え世界文化遺産登録に向けて取り組んでおり、これまで、若い世代の育成や参画を促進するための「立山砂防世界遺産登録推進ユースプログラム」を十余年に渡り継続して実施してきました。そして今年度は、県営着手120年国直轄100年を記念した事業として、県内外の大学と連携しながら、講座や野外学習を組み合わせた「世界遺産×観光フィールドスタディ」を実施したいと考えており、ここでは、立山砂防の歴史やユースプログラム、記念事業の内容についてご紹介させていただきたいと思います。
■立山砂防の歴史と立山カルデラ

立山カルデラは富山県の南東部、日本の北アルプスに位置する東西6.5㎞、南北4.5㎞の巨大な窪地です。ここは、世界有数の急峻な河川である常願寺川の源流域であり、年間約5000㎜の降水量に脆弱な地質を持つなど、過酷な自然環境にあります。
安政5(1858)年に「安政の飛越大地震」が発生し、立山カルデラ外縁の大鳶山、小鳶山が崩壊、崩れ落ちた大量の土砂が富山平野を流れる常願寺川源流の真川、湯川をせき止め、いくつもの天然ダムが形成されました。その後、天然ダムの決壊により大土石流が2度にわたって富山平野を襲い、人々に甚大な被害をもたらしました。以来、常願寺川は毎年のように氾濫を繰り返す「暴れ川」となりました。
明治16(1883)年には、こうした水害対策に注力するため、石川県から分県して富山県が誕生しました。富山県は県予算の約80%を費やして河川改修工事に取り組みましたが、その後も水害は治まらず、明治39(1906)年には県営による砂防事業が開始されました。しかしながら、大正8(1919)年、11(1922)年に発生した土石流により壊滅的な被害を受け、県営砂防事業は中止を余儀なくされました。
その後、砂防法の改正などを経て砂防事業は県から国に引き継がれ、国直轄での砂防事業が行われるようになりました。そして今日、泥谷、白岩、本宮堰堤(国重要文化財)をはじめとした歴史的砂防施設群が、現役の砂防施設として重要な役割を果たすとともに、立山カルデラ内では今もなお砂防工事が連綿と続けられ、富山平野に暮らす人々の生活を守っています。
立山砂防の歴史は、人々が厳しい自然環境に向き合い、活かしながら、土砂災害を克服し、豊かな富山平野を築いてきた歴史です。



図2〜4:カルデラ内の歴史的砂防施設
■立山砂防世界遺産登録推進ユースプログラム(2013~2025年)
富山県では、立山砂防の世界文化遺産登録に向けた取り組みの一環として、2013年から毎年夏休みシーズンに、大学生や高校生、親子を対象に「立山砂防世界遺産登録推進ユースプログラム」を実施してきました。現地見学や講座、グループワークなどを通じて、立山砂防の意義や先人の取り組みなどを伝え、未来を担う若い世代への継承を図ってきました。
≪2025年度ユースプログラムの概要≫
① 高校生・大学生等コース
・実施日 2025年8月19日(火)~20日(水)
・参加者 県内外の高校生、大学生 計12名(公募)



② 親子コース
・日時 2025年7月25日(金)9:00~16:30
・参加者 小学校5年生から中学校3年生の児童・生徒とその保護者10名(公募)
・内容 立山カルデラ砂防博物館見学、立山砂防女性サロンの会による絵本読み聞かせ、国土交通省立山砂防事務所体験学習(砂防実験、3Dシアター、立山砂防訓練用軌道(トロッコ)体験乗車等)、本宮砂防堰堤見学 等

■「世界遺産×観光フィールドスタディ」の実施について
令和8(2026)年は、県営砂防着手120年、国直轄砂防事業開始100年の節目を迎えます。富山県では、関係機関や民間団体、県内外の大学等が連携しながら、立山砂防の歴史と価値を次世代へ継承するともに、未来を担う若者が主体的に世界遺産登録を見据えた地域の将来像を考える契機とし、また、世界遺産登録プロセスへの参加促進を図ることを目的として、従来のユースプログラムを充実させた記念事業を展開したいと考えています。
具体的には、本年9月、県内外の大学と連携して、講義とフィールドワークを組み合わせた5日間のプログラム「世界遺産×観光フィールドスタディ」を実施するとともに、11月には、その成果を発信する「世界遺産ユースサミット」を富山市内で開催することとしています。
≪世界遺産×観光フィールドスタディ概要≫
・実施日 令和8年9月14日(月)~18日(金)
・場所:富山県内
・テーマ「立山砂防の保存・活用と持続可能な観光まちづくり」
・講座:世界遺産、近代化遺産、文化資源の活用と観光施策、富山県の歴史・文化・砂防、立山砂防の世界遺産登録の取組み、文化財を活用した地域振興 等 (予定)
・現地調査:立山カルデラ、五箇山、他富山県内(予定)
【フィールドスタディリンク先】
https://www.pref.toyama.jp/810221/miryokukankou/bunka/bunkazai/tateyamasabo/fieldstudy.html
■おわりに
立山砂防の世界文化遺産登録に向けては、さらに、顕著な普遍的価値の証明に向けた調査研究や保存活用に係る検討など、困難な課題が山積していますが、今後ともこうした未来を担う若者たちを中心とした取り組みを大切にしながら、治水砂防に真摯に取り組まれた先人の思いや歴史、砂防(防災)の重要性などを、幅広い地域、世代の方々に向けて発信し、この貴重な遺産を後世に伝えていくことができるよう着実に取り組んでまいりたいと思います。
(富山県世界遺産・ふるさと教育推進課)