イコモス会員の持続可能性に向けて


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イコモス会員の持続可能性に向けて

Toward the Sustainability of ICOMOS Membership

大窪 健之 Takeyuki OKUBO

Hiroki Yamada - ICOMOS記事大窪イラスト

文化遺産は目減りする。古いものが時間と共に失われていくことは、避けようがない事実である。だからこそ、既に指定・登録されている文化遺産をできる限り守り続けることと同時に、将来の文化遺産の候補となるものを見つけ出し、将来に備えることも重要な活動となっている。そして、その活動を持続させるためには、文化遺産を支える人材と世代間の繋がりをいかに継承していくかも、同じく重要な課題となる。

筆者も参加している京都府建築士会では、災害復興の過程において、数多くの未指定文化遺産が、文化的価値や歴史的価値について十分に調査されないまま公費解体により人の手で失われてきた事実を受けて、災害に備えて文化遺産の予備軍をGIS(地理情報データベース)上に登録するという作業を継続している。災害時の応急危険度判定において、建築士が少しでもこのデータベースを参照して所有者等とコミュニケーションを取り、所有者に公費解体を思いとどまっていただく機会を創出しようとする試みである。これは、「将来、指定・登録される可能性がある文化遺産をあらかじめ早期に目をかけて守り育てる」という、文化遺産の持続可能性を支える、地味ながら重要な取り組みと考える。

もちろん文化遺産を直接的に守る活動にも、持続性は不可欠である。筆者が学ばせていただいている清水寺とその周辺地域の防災活動の一環に、清水寺警備団という歴史のある自主防災組織がある。この組織の構成は、半数を清水寺関係者が占める一方、残りの半数は門前の住民たちで構成されている。防災活動の合言葉は「寺、坂、我が家」で、我が家だけでなく寺と地域を自分たちで守る決意が示されている。

この組織の特筆すべき点は、通常は危険を伴うため許可されていない公設消火栓の操作を、消防局から特別に許可をもらうほどに研鑽を積んでいる点にある。この文化遺産所有者と周辺地域住民のコンビネーションは、災害発生時だけでなく境内の警備や日常的な巡回にも及んでおり、年始年末には朝まで門前の詰所に集まり、警備をしながら交流を深めている。その際の重要な習慣として、参加するメンバーは現役世代だけでなく、先代も、そしてご子息までもが同じ場に集まるという暗黙知がある。この仕組みによって、3世代に渡って代々その思想と活動が持続されてきた。

個人的には、この「3世代に渡る繋がり」こそが、活動の持続可能性を担保する上で特に重要なファクターではないかと考えている。日本イコモスの会員には、多くの経験を有するシニア会員、次世代の中核を担うEP、そして将来の担い手となる学生会員が存在している。この三者の関係は、まさに求められている3世代会員区分であり、世代を超えた継承の仕組みの可能性を示している。

これまでEP常置委員会では「EPサロン」という、EPメンバーが話題提供を行い、EP会員の間で自由に意見交換を行うWeb会議が定例で開催されてきた。EPよりも一つ上の世代にあたる筆者もメンターとしてサロンに参加しており、その内容は非常に興味深く、毎回新しい刺激を受けている。EPサロンは、すでに「世代をまたぐ交流の場」として機能し始めているといえる。

個人的には、このような交流の場をさらに発展できないだろうかと妄想してしまう。もちろん学生会員には学業があり、そのかたわらにできることは限られる。しかし、EP以外の個人会員、EPメンバー、学生会員を含めた3世代が、「清水寺警備団方式」で交流できる機会を増やしていくことは、日本イコモスの会員活動を持続させていくための重要な試みとなるのではないだろうか。

もちろん、どこかに過大な負担がかかるような体制や進め方では活動が持続しない。そのため、既存の仕組みや枠組みを活かすのが現実的である。EP定例サロンにも学生会員が参加するようになったと聞いているが、拡大理事会等の後に開催されているイコモス会員向けの研究会にも学生会員の積極的な参加を期待したい。毎年、EPの企画として学生向けの交流企画が試みられているが、そこから発展し、「学生会員ならでは」の主体的な活動が生まれていくことも期待される。そのためには、学生会員にはEPの場をうまく活用してもらい、イコモス全体としては学生会員を支援し、育てていくことが重要である。

年齢や世代で会員を区分すること自体に個人的には違和感があるが、持続的な議論のために既存の枠組みを活かし、幅広く「タテの串」を刺す機会をつくることには、大きな意味がある。そのため、例えば学生会員独自のイコモス活動を支援する「学生会員グループ活動支援制度」のような仕組みがあれば、「EP定例サロン」から派生する形で「学生定例サロン」が生まれたり、既存の研究会と組み合わせて「ジェネレーション討論会」などが開催できたら、世代を超えた会員交流の新たな可能性が開かれるのではないだろうか。EPには、学生向けのこうした主体的な活動を支える役割も期待したい。

この課題は、日本イコモス内部にとどまるものではない。国際イコモス本部でも、会費制度の改訂の議論の中で、シニア会員(退職者の会員)とレギュラー会員、若年の会員であるEP会員とで会費に差をつけることが検討されている。一方で、学生会員の制度を設けていない国内委員会も多く、未来を担う学生への支援については、まだ十分に議論されていない。

世界最速レベルで少子高齢化が進み、世界から動向が注目されている日本において、日本イコモスが先陣を切って学生会員を含む「世代をつなぐ持続可能な会員交流モデル」を実践し、世界各国のイコモスに提示できれば、その意義は大きい。文化遺産の持続可能性は、それを支える人材と関係性の持続可能性なしには成り立たない。学生会員が自律的な枠組みとなることを応援しつつ、学生会員、EP、個人会員が互いに学び合い、支え合う仕組みを育てることは、日本イコモスにとって重要な課題である。清水寺警備団に見られるような世代を超えた継承の知恵に学びながら、文化遺産のみならず、人材と会員活動の持続可能性についても何ができるか、自分なりに考えていきたい。

(本部執行委員/立命館大学)