第23小委員会(ヘリテージ・エコシステム)が2026年夏季に実施した群馬県における絹産業関連遺産に関するインタビュー調査について


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第23小委員会(ヘリテージ・エコシステム)が2026年夏季に実施した群馬県における絹産業関連遺産に関するインタビュー調査について

Interview Surveys on Silk-Industry-Related Heritages in Gunma Prefecture conducted by the 23rd Subcommittee (Heritage Ecosystem) in 2026

八並 廉 Ren YATSUNAMI

インタビュー調査の様子
インタビュー調査の様子

はじめに

2026年夏季、7月4日および8月22-23日の日程で、第23小委員会(ヘリテージ・エコシステム)メンバーによる群馬県内における絹産業関連遺産の視察及びインタビュー調査が実施されました。それに先立ち、2025年9月6日、同年12月6日、および2026年5月9日には「ヘリテージ・エコシステムに関する勉強会」が群馬県内の各所で実施されており、ワークショップやまち歩きを通じて委員会メンバーは絹産業に関わる方々と交流を続けてきました。以下に報告する現地視察は、それらに続く委員会活動の展開であると同時に、本年10月にマレーシアで開催される総会に向けた準備の一環としての意義もあります。群馬県をはじめとする各地方公共団体のみなさま、各回のワークショップや視察の実施にご参加・ご協力くださったみなさまに、厚く御礼を申し上げます。

2026年7月の視察について

2026年7月4日の午前、大丸屋(富岡市)を見学しました。蚕の飼育のためのビニールハウスには、エアコンや散水チューブが設置される等、気候変動に対応しながら養蚕を続けるための対策が施されていました。インタビューにおいては、養蚕農家の減少を考慮し、給桑のタイミング等、長年の経験に基づく技を未来の世代に引き継いでいくことの大切さを語ってくださいました。JICAグローカルプログラム参加者の方々を受け入れられており、当日は同プログラム参加者の方々からもお話を伺うことができました。大丸屋が海外協力隊派遣に先立つ活動経験の場としての役割も果たされている様子を知ることができました。

同日の午後には、群馬県蚕糸技術センター(前橋市)と群馬県立日本絹の里(高崎市)を訪問しました。蚕糸技術センターの見学では、稚蚕人工飼料「くわのはな」の製造・供給の状況について説明をうけました。さらに、暑さに強い品種「なつこ」の開発や「蛍光シルク」の開発等、絹産業における気候変動対策や高付加価値化にも同センターの役割は重要であることが理解できました。同センター見学の後、日本絹の里に向かうと、そこでは多くの方々が展示やイベントを楽しみに訪れており、活気を感じました。充実した常設展示に加えて、企画展・特別展を年6回のペースで開催されているとのことでボランティアの方々の熱意を感じました。

2026年8月の視察について

8月22日には、咲前神社(安中市)において、養蚕信仰や関連する慣習や伝統行事について学ぶ機会を得ました。たとえば、大々御神楽(安中市重要無形民俗文化財)については、後継者不足等で継続できていなかった時期もあり、約50年前に復活した経緯があるとのことでした。将来に担い手が不足しないよう、かつては農家の長男が舞うこととされていたことも緩和され、今では女性や学生もお囃子や舞に参加されるようになっているとのことです。また、第63回神宮式年遷宮の御装束神宝材料「生糸」の蚕繭生産地・繰糸施工地として群馬県が選定されていることから、2025年7月には、碓氷製糸の工場で執り行われた「生糸繰糸始式」においても咲前神社が重要な役割を果たされたこと等、近年の動向についてもお話を伺うことができました。

次に、旧新町紡績所(高崎市)においては、食品や医薬品の製造を行っている工場の敷地内で歴史的建造物が保存活用されている現場を見学することができました。旧新町紡績所には、国の重要文化財として指定された建造物があります。また、旧新町紡績所は、史跡としての指定も受けています。衛生管理の徹底が求められる食品・医薬品の工場を稼働しながら、明治期の建物の積極的な活用を継続するということについては、相当の企業努力を要するものと推察されますが、インタビューにおいては、歴史ある紡績所の建物を維持している工場で働いていることへの誇りやそれらを継承することへの前向きな想いが語られていました。

8月22日の最後の訪問先は、上毛新聞社(前橋市)でした。養蚕や織物等、絹の文化に関わる人々の思い出に光をあてる連載「私の中のシルクカントリー」に代表されるような上毛新聞のこれまでの取り組みについて、活発な意見交換がなされました。シルクカントリー群馬をテーマとする出版活動についても伺うことができる貴重な場でした。上毛新聞社には、時事問題や流行の話題を扱うにとどまらず、それぞれの記者が挑戦しようとする企画を応援できる社風があるとの声もあり、これらの有意義な企画を実現に導く大切な一要素なのだろうと考えました。

8月23日には、いせさき明治館(伊勢崎市)を訪れました。視察当日は「秋まち・めいせん 四季の移り変わり」と題された企画展示が行われており、伊勢崎市の重要文化財に指定されている黒羽根内科医院旧館(旧今村医院)を絹織物・伊勢崎絣の作品とともに鑑賞できる空間になっていました。

続いて、国登録有形文化財である後藤織物(桐生市)を見学しました。桐生近代産業遺産保存活用機構とテクスト桐生とが協働して後藤織物の保存と観光活用に取り組む文化遺産管理スキームは興味深く、今後も重要な例として参照されるものと思われました。また、後藤織物の総合調査を経て明らかにされたデータや資料は貴重で、劇団と連携した独自の見学案内の企画等、後藤織物の今後の活動に大いに活かされたいとのことでした。近隣の「織物会館」や「織物参考館『紫』」が地域で果たしている役割を大切に考え、それらとの棲み分けや相互連携・相乗効果を意識しながら、後藤織物の在り方を考えられていると語られていたことも印象に残っています。

同日は、赤城南麓の養蚕農家建築である前橋市指定重要文化財の旧関根家住宅(前橋市)や、かつて繭や生糸の保管倉庫として利用され国の登録有形文化財に指定されている旧安田銀行担保倉庫(前橋市)の視察も実施し、それぞれの現状を確認しました。

なお、今年8月の視察の様子について、8月23日付の上毛新聞に記事が掲載されています。現地視察やインタビューで得た気づきを、今後の委員会活動に活かしていきたいと考えています。

(九州大学)