巻頭言(2026年秋号)
巻頭言(2026年秋号)
Foreword (Autumn 2026)
岡田 保良 Yasuyoshi OKADA(日本イコモス国内委員会委員長)
東京近郊では、初夏の熱波に辟易したものでしたが、8月の暑さはさほどではなく過ごせました。今夏、日本列島の西と東では、同じ猛暑といっても大きな違いがあり、極端なエルニーニョや偏西風の大蛇行といった現象が影響していると聞く一方、台風の奇異な進路や頻発する線状降水帯あるいは集中豪雨のありようも尋常ではなかったようです。つい先日ネパール北部で起こった目を覆いたくなる土石流は、まだ原因究明の只中のようですが、昨年のイコモス総会で訪れたばかりの地であるだけに余計に衝撃的でした。異常気象の常態化が続いています。大きな地震も世界各地で相次ぎ惨状を引き起こし、加えて複数国を巻き込んだ深刻な武力衝突「戦争」という人為災害も先の出口が見えず、被災を免れない文化遺産は数知れません。
さて、今年7月、お隣の韓国プサンで世界遺産委員会が開催されました。本号で特集していますのでぜひご一読ください。公式日程は19日から29日。その間自身は24日から27日までプサンに渡り、東京にも増して暑い日がつづくなか、自ら初めての委員会の空気と空間を体験しました。我が国の「文化遺産国際協力コンソーシアム(https://www.jcic-heritage.jp/)の一員としての参加でした。このイベントの実現にあたっては、私個人の出張手配なども含め、事務局の方々に並々ならぬお世話をいただきました。改めてお礼申し上げます。
このプサン出張をはじめ、この6月から8月は私事を含めてさまざまな土地を訪ねる機会が相次ぎ、目まぐるしくも良い刺激の多い日々でした。キルギスで遺跡調査をつづける帝京大の研究グループからお誘いがあり、遠い過去に専念していたことのある西アジアのキリスト教遺跡の話題で懇親会がもりあがる日もあれば、一夜明けて五島列島に飛んで離島の潜伏キリシタン集落跡を訪ねた折には、域内の旧跡に立つ「肥前型」と称される石造りの鳥居に魅かれる機会もありました(写真)。プサンに渡る直前には「全国近代化遺産活用連絡協議会」の大会に呼んでいただき、新潟という地方都市の遺産の豊かさとそれらの保存修復に真摯に取り組んでおられる方がたに敬服することもありました。関係の方々に改めてお礼申し上げます。
熊本では10年前の震災が不幸にもこの7月末に再来しました。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。日本イコモスでは、矢野事務局長ら被災文化財支援特別委員会の面々が早々に現地を訪ね、つい先日、復旧・復興に向けた緊急提言(8月20日付)をまとめていただきました。ウェブサイトをご参照ください(https://icomosjapan.org/)。
来る10月にはマレーシアの古都クチンでイコモスの総会です。3年に一度の役員選挙も実施されます。日本からも多くの方々が参加されることを期待しています。