国際会議「世界文化遺産とオーセンティシティ」


HOME / 季刊誌 / 2025年春号(Spring 2025) / 国際会議「世界文化遺産とオーセンティシティ」

国際会議「世界文化遺産とオーセンティシティ」

Report on the International Conference “World Cultural Heritage and Authenticity”

森本 晋 Susumu MORIMOTO

国際会議エクスカーション(法隆寺)
国際会議エクスカーション

公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所は、文化庁並びにWHITRAP上海(ユネスコ・アジア太平洋地域世界遺産研修研究所上海センター)と共催で、国際会議「世界文化遺産とオーセンティシティ」を開催した。これは2024年がオーセンティシティに関する奈良文書採択から30周年であることを記念したものである。

国際会議議論の様子

会議の概要を以下に掲げる。

【スケジュール】

12月17日(火) 【エクスカーション】 世界遺産法隆寺修理現場、および、焼損部材保管施設

現地講師:大林潤氏(国立文化財機構奈良文化財研究所文化遺産部上席研究員)、奈良県文化財保存事務所

12月18日(水) 【第一部】世界遺産の実務におけるオーセンティシティの取扱いを検討する

基調講演 「オーセンティシティに関する奈良文書の再検討」クリスティーナ・キャメロン氏(モントリオール大学名誉教授) *オンライン参加

講演I 「オーセンティシティの再考:奈良文書から30年」ガミニ・ウィジェスリヤ氏(WHITRAP所長特別アドバイザー)

講演II 「オーセンティシティ魅惑の現状:融合・記憶化・損失の文脈で考える」クリスタル・バックレー氏(ディーキン大学名誉研究員・元ICOMOS副会長)

講演III 「様々な文化的文脈における危機後の遺産復興に向けたオーセンティシティとインテグリティの概念の再検討」ロヒト・ジギャス氏(ICCROMプログラムマネージャー)

パネルディスカッション (コーディネーター:稲葉信子氏、サマライザー:ロヒト・ジギャス氏、討論参加者:参加者全員)

12月19日(木) 【第二部】災害復旧時を例にその過程で生じた課題からオーセンティシティを考える

講演IV(日本) 「記念的木造建造物の復元(再建)とその価値の真実性(オーセンティシティ)」本中眞氏(国立文化財機構奈良文化財研究所所長)

講演V(フランス) 「文化遺産とオーセンティシティ:災害復興の課題を検証する パリのノートルダム大聖堂の事例から」エリック・パロー氏(フランス政府公認主任文化財修復建築家・フランスICOMOS委員長)

講演VI(中国) 「震災復興におけるオーセンティシティ 四川省都江堰市西街歴史地区の場合」コウ・ホアイン氏(同済大学建築都市計画学院准教授・WHITRAP上海)

講演VII(ニュージーランド) 「震災後、「公共のリビングルーム」としてのオーセンティシティを守り続ける クライストチャーチ市庁舎」アマンダ・オース氏 *オンライン参加(クライストチャーチ・シティカウンシル主任遺産アドバイザー)

講演VIII(韓国) 「崇礼門(南大門)の復元とそのオーセンティシティをめぐる議論」ジョ・サンスン氏(国立文化遺産研究院国立中原文化遺産研究所長) *オンライン参加

総合討議 (コーディネーター:稲葉信子氏、サマライザー:ロヒト・ジギャス氏、討論参加者:参加者全員)

国際会議議論の様子

【要旨】

・オーセンティシティという概念の起源と世界遺産作業指針におけるその適用

オーセンティシティ(Authenticity)という用語を使用する主要目的は、遺産の重要性を伝える能力を表すことである。1994年の「オーセンティシティに関する奈良会議」での議論では、異なる文化的多様性を尊重し、様々な文化的・地理的文脈における保存の決定に関する議論を促す必要性が認識された。この当初の意図を維持することが重要である。

オーセンティシティの理解には多くの混乱があるが、それは主に、オーセンティシティが英語であり、さまざまな言語で異なる解釈を持つ可能性があるためである。

オーセンティシティに関連して「価値」と「属性」を理解するという課題もある。運用ガイドラインの文脈では、顕著な普遍的価値を伝えるためだけでなく、オーセンティシティに関連して使用される属性の使用にも混乱が見られる。したがって、オーセンティシティと卓越した普遍的価値および属性を関連付けるには、さらなる検討が必要である。

1994年以降、遺産の範囲は大幅に拡大した。そのため、オーセンティシティという概念は、無形遺産だけでなく、その土地固有の遺産、農村遺産、都市遺産、文化的景観など、さまざまな類型の遺産への適用を検討する必要がある。

・リビングヘリテージのオーセンティシティについて

継続と変化は、リビングヘリテージに固有の特徴である。生きた遺産を維持するために必要な創造性、革新性、適応性というレンズから、オーセンティシティをどのように捉えたらよいのだろうか。

・危機後の復興におけるオーセンティシティ

災害後の迅速な復興とオーセンティシティの維持の必要性をどのように両立させるのか。この点に関しては、社会的・物理的な側面と、災害後の復興という特殊な状況に目を向ける必要がある。

災害前の減災・防災、災害後の復興において、遺産の属性や価値を通じてオーセンティシティを考えるためには、災害前から積極的にオーセンティシティとリスク軽減の関連性を考えることが重要である。

(ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所)