「北海道・北東北の縄文遺跡群 世界遺産登録3周年記念 東京フォーラム」開催報告
「北海道・北東北の縄文遺跡群 世界遺産登録3周年記念 東京フォーラム」開催報告
Report on the Tokyo Forum of the 3rd Anniversary of World Heritage Registration of Jomon Prehistoric Sites in Northern Japan
八代 玲菜 Reina YASHIRO

北海道、青森県、岩手県、秋田県にある17の縄文時代の遺跡で構成される「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、2021年7月27日、第44回世界遺産委員会拡大会合において世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録後、縄文遺跡群の価値や魅力について広く普及・啓発を図るため、国内各地で毎年フォーラムを開催しており、2025年1月26日(日)には、東京都の有楽町朝日ホールにおいて、「北海道・北東北の縄文遺跡群 世界遺産登録3周年記念 東京フォーラム」(主催:「縄文遺跡群世界遺産本部」)を開催しました。(参加者数:約600人)

また、会場ロビーでは各構成資産のパネル展示や今年度世界文化遺産となった佐渡島の金山についての紹介コーナーも設置しました。


今回のフォーラムでは、縄文時代を代表する大規模記念物である「環状列石」を取り上げ、構成資産として所在する「大湯環状列石(秋田県鹿角市)」、「伊勢堂岱遺跡(秋田県北秋田市)」、「小牧野遺跡(青森県青森市)」、「大森勝山遺跡(青森県弘前市)」、関連資産の「鷲ノ木遺跡(北海道森町)」について、各市町の担当者が遺跡の概要や最新の研究成果等の報告、パネルディスカッションを行いました。
基調講演では、環状列石の特徴について、①時代、②分布範囲、③技術の3つの観点から、縄文時代後期に多くみられ、北海道・北東北を中心に分布し、構築に当たって土地の造成や整地が見られるものがあり、石の配置や並びが遺跡によって異なるとしました。
また、環状列石の重要性については、調査研究において環状列石の組石・配石の下にある墓穴や、祭祀に関係する多数の出土品が確認されていることに触れ、「環状列石は共同墓地、祭祀・儀礼の空間としての役割を持っており、高い精神性を示すものとして重要である」としました。
そして、環状列石の研究の現状について、発掘調査により内容の解明が進みつつあるものの、成立と系譜、構築の目的、出現の背景等の未解決の課題もあることが指摘され、今後の調査研究は環状列石そのものの詳細な分析や、周辺遺跡や集落の動向との相関、海外の先史時代の類似例についての比較検討が重要としました。
次に大湯環状列石では、野中堂環状列石と万座環状列石の2つの環状列石や環状列石周辺の発掘成果から、当時の墓制、祭祀・儀礼の変遷に関する見解を示し、遺跡の地理的関係や日の出・日の入の観点等から環状列石の特徴を説明しました。
伊勢堂岱遺跡では、土偶、土製品や三脚石器等の特徴的な出土品から、環状列石の活発な祭祀についての見解が示されました。また、現代の遺跡活用について、デジタル技術の導入や観光促進の事例等に触れ、遺跡の情報発信の重要性を語りました。
小牧野遺跡では、環状列石の誕生について、寒冷化により食糧確保が厳しく、拠点集落から小規模集落に集落形態が移り変わったことが要因と考えられ、共同の祭祀場や墓地が誕生したという見解を示しました。また、特有の環状列石の配石方法を取り上げ、土木工事の実施、配石等の一連の作業についての技術力の高さを指摘したほか、他でも同様の配列が発見されていることから、環状列石を構築した人々の間で交流があった可能性を示しました。
鷲ノ木遺跡では、環状列石の近くから見つかった竪穴墓域とその周辺から出土した鐸形土製品、三角形土製品等の出土品から、他の遺跡と同様に、弔いの儀式や祭祀のための場として活用されていた可能性を指摘するとともに、「鷲ノ木遺跡が、津軽海峡を挟んで、北海道・北東北に共通する精神文化が存在したことを示す重要な遺跡である」と語りました。また、遺跡公開に向けた整備の取組や遺跡の保存と開発の両立、保全に関する取組も併せて紹介しました。
大森勝山遺跡では、配石の特徴や石の種類等を取り上げ、環状列石を構築した人々の間での交流の可能性について語ったほか、後期の環状列石に伴う集団墓が、晩期の大森勝山遺跡では見つかっていないことから、晩期には共同墓地の役割を終え、祭祀場として活用されていたという見解を示しました。また、遺跡の麓に立地する岩木山頂と太陽運行の観察結果を取り上げ、景観と環状列石の構築場所の関係性について述べました。
パネルディスカッション 「環状列石の謎を考える」では、日頃から遺跡と向き合っている担当者が、環状列石最大の謎であるその目的や意義、出現の背景について活発な意見を交わすとともに、今後実施したい取組や研究について述べ、フォーラムを締めくくりました。

今回のフォーラムをきっかけに、多くの方々が縄文遺跡群を訪れ、縄文人と同じ目線で立ち、遺跡の価値や魅力を感じ、環状列石の謎に挑んでいただければと思います。
縄文遺跡群世界遺産本部では、引き続き世界文化遺産である縄文遺跡群の普及・啓発のためのフォーラムを開催するとともに、積極的な保存・活用に努めて参ります。
( 縄文遺跡群世界遺産事務局)