International Conference on Cultural Heritage in Africa: A Dialogue on the Concept of Authenticityでの発表報告
International Conference on Cultural Heritage in Africa: A Dialogue on the Concept of Authenticityでの発表報告
Report on the International Conference on Cultural Heritage in Africa: A Dialogue on the Concept of Authenticity
宮﨑 彩 Aya MIYAZAKI

2025年5月6日から9日の3日間、ケニア・ナイロビ市において、400人以上のアフリカの文化遺産にかかわる専門家、政府関係者、市民社会のメンバーが一同に会するUNESCO会議が開催された。African perspectiveからAuthenticityについての発表が行われ、熱のこもった議論や各国政府代表によるコミットメントに関するコメントが3日間繰り広げられた。その背景には、Global Strategyなどの国際的な議論が長年展開されてきたにもかかわらず、アフリカの世界文化遺産の登録数が伸び悩んでいるという問題意識がある(参照:Concept Note)。そのような状況をふまえ、豊かな文化を包摂するにもかかわらず、何故それが国際的に認められていないのかという点について、アフリカという大きな大陸の多様な文化圏の人びとが集まり、未来を見据えて考える場が今回提供されたと言えよう。会議の最終日にはケニアの現大統領も参加し、The Nairobi Outcome on Heritage and Authenticityが公式に宣言された(参照:The Nairobi Outcome on Heritage and Authenticity)。
アフリカ出身の発表者が多い中、私は数少ないアジアからの参加者の一人として『Heritagization of Economic Practice and Communities: Understanding the tea landscape of Kyoto in the context of a tea heritage ecosystem』という表題で発表を行った。これは、世界遺産条約ができる以前は「文化遺産」として捉えられてこなかった事象の文化遺産化プロセスについて、日本の宇治の茶畑を事例に分析をしたものである。特に、富岡シンポジウムで採択された群馬宣言のキーワードであるHeritage Ecosystem(ヘリテージ・エコシステム)の概念を適用し、農業的景観に限定されない生活文化や芸術、近代技術などについても触れ、少子高齢化や人口流出という問題に直面する地方における文化的景観の意味合いについても触れた。今回会議が実施されたケニアもコーヒープランテーションや茶畑などの景観が広がっており、重要な文化の一部を形成している。それにもかかわらず、これまでそのようなサイトの文化的価値についてアフリカではあまり議論がされてこなかったため、今回日本の事例について話す機会が与えられたのではないかと推測している。

発表後、ヘリテージ・エコシステムや奈良ドキュメントについての質問やコメントが多数出され、非常にホットな議論が繰り広げられた。コミティーメンバーの河野俊行先生と稲葉信子先生がオブザーバーとして在席してくださったこともあり、お二人のPlenaryでの発表内容も踏まえた内容であった。特にヘリテージ・エコシステムについては、African perspectiveというキーワードを多様な文化圏に当てはめるための一つのアプローチになりうるのではないか、という期待が持たれたように感じる。
今回の国際会議が今後どのように世界遺産条約の運用にとどまらない新たな視座を提供していくのか、見守っていきたい。
(AP地域日本EP代表/東京大学教養学部教養教育高度化機構)