巻頭言(2025年夏号)
巻頭言(2025年夏号)
Foreword (Summer 2025)
岡田 保良 Yasuyoshi OKADA
こころざしを新たに
今年3月開催の、私たち日本イコモスの総会は、ルールに従って新たな任期の始まる17名の理事を会員のみなさまに承認していただく機会でした。任期満了で退任されたのは、長く副委員長を務められた増井正哉さん、木の学術委員会でご活躍の土本俊和さん、そして今も神宮外苑景観の保全を強く訴えつづけておられる石川幹子さん。以上3名の方々に代わって新しく理事に就かれたのは、プレック研究所で世界遺産事業を率いる大野渉さん、東京大学で東アジアの建築史研究に取り組む海野聡さん、そして奈良文化財研究所で景観部門を担う惠谷浩子さん。また監事2名のうち任期を満了された赤坂信さんに代わって増井正哉さんにその職を引き継いでいただきました。
これらの承認手続きを受け、直後に開かれた新たな理事会において代表理事選定・承認の議が諮られた結果、ひきつづき私が同職を務めることになりました。はや4期目となるので、定款上、最後の任期となります。会員の皆さまにはこれまでと変わらず、日本イコモスの様々な分野での活動を支えていただきたく、改めてお願いいたします。
自省を込めて
中東ガザにおける軍事衝突がその国土と住民生活の徹底した荒廃を招きつつあるなか、イスラエルがイランへの武力攻撃を開始したというニュースは、さらなる大きな衝撃でした。両者とも国土全域に文明の痕跡を色濃くとどめる文化遺産大国です。すでに少なからぬ人的被害が伝えられていますが、さらなる大事に至る前に事態が終息することを心より望みます。
思い起こすと、私自身のイコモス活動の入り口は、もう一つの文明揺籃の地イラクの遺産との関わりでした。先史から現代に至るまで当地の建築文化の主役は日乾煉瓦による造形であり、この文化の広がりは隣国イランを越えシルクロード沿いに中国文明の心臓部にまで至ります。イコモスの「土の建築遺産」学術委員会ISCEAHがその本領を発揮すべきフィールドであり、イランで最初の世界遺産の一つチョガ・ザンビール遺跡の修復事業にかかわって以来、私もその一翼を担うべき立場にあるのですが思うに任せない現実があります。ISCEAHの任の一つにTerraと通称される国際集会の運営があり、来る2026年4月にその第14回集会がアブダビで開催される予定で、目下準備中と聞いています。この動きとは別に、ISCEAHでは土の建築遺産保存のための憲章を制定すべくタスクチームが作業を進めています。これらの動きに多少なりとも関心をお持ちの方、ぜひ申し出ていただきたく、筋違いを承知でここにお願いする次第です。
本号について
このウェブインフォメーション誌は昨年春に装いを新たにして以来、春夏秋冬各季に開催される私たちの理事会に合わせてウェブ上にアップしてきたのですが、広報担当の方々にはご努力いただいたにもかかわらず、今回はやむなくその慣習を破ることになってしまいました。責任の一端を負う者としてお詫び申し上げるとともに、ご理解をいただきたくお願いいたします。
さて、本号の特集では、震災から1年半を経過した能登地方のその後について、かねてよりご尽力いただいている横内基さんはじめさまざまな角度から報告をいただきました。そのほか会員の皆さまからは、5月にナイロビで開催されたオーセンティシティに関する国際会議の模様、近年活発な動きを見せるアジア・太平洋地域会議ソウル開催の概容、1月の群馬宣言以降注目の集まる「ヘリテージ・エコシステム」に取り組む小委員会の発足、連続セミナーの企画を進めるEPグループの活動、さらにはICCROMの動向など、多彩な記事の提供を受けることができました。本号へのご協力に感謝申し上げます。

(日本イコモス国内委員会委員長)