特集にあたって:令和6年能登半島地震からの1年半を振り返る
特集にあたって:令和6年能登半島地震からの1年半を振り返る
Introduction to the Special Issue: Reflecting on a Year and a Half Since the 2024 Noto Peninsula Earthquake
横内 基 Hajime YOKOUCHI(本号特集担当/被災文化財支援特別委員会)

人々が穏やかな気持ちで新年を迎え、それぞれの時間を大切に過ごしていた最中、令和6年(2024)能登半島地震が発生し、能登半島を中心に多くの犠牲をもたらした。その後、9月の奥能登豪雨が、復旧に向けて歩み始めたばかりの地域を再び深く傷つけた。普段の暮らしに豊かな恵みをもたらしてきた自然の力は、時として人々の営みを容赦なく襲う。今回の一連の災害は、今後想定される大規模災害への備えの重要性を、私たちに改めて突きつけた。文化財についても、その保護体制や防災のあり方を見直すべき時が来ているようにも思える。
被災文化財支援特別委員会では、地震発生直後から文化財の被害や復旧状況を継続的に調査し、その情報を国内外に発信してきた。本誌2024年春号および冬号でも、これらの活動内容や現地の状況を報告している。文化庁では、発災直後から県や市町村と連携しながら被災文化財の復旧支援を進めるとともに、専門家による文化財建造物の耐震対策に関する協力者会議を設置。被害状況の調査、原因分析、今後の耐震対策の方向性について検証が行われた。また、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震に続き、今回の災害においても文化財レスキュー事業や文化財ドクター派遣事業が実施されており、文化財防災センターが事務局となって現在もその活動が継続している。
今号の特集では、行政の取り組み、現地の動き、復旧支援活動の様子など、地震発生から1年半の歩みを振り返っていただいた。被災地の復旧・復興には、今なお時間と支援が必要である。読者の皆さまには、今後も被災者や被災文化財に心を寄せ、現地の状況に目を向けながら、ともに歩んでいただきたい。