ICOMドバイ大会の開催


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ICOMドバイ大会の開催

ICOM Dubai 2025

栗原 祐司 Yuji KURIHARA

ICOM新執行役員(左から2人目が栗原)
ICOM新執行役員(左から2人目が栗原)

11月11日から17日にかけてICOM(国際博物館会議)ドバイ大会が「The Future of Museums in Rapidly Changing Communities(急速に変化するコミュニティにおける博物館の未来)」をテーマに、ドバイ世界貿易センターで開催された。

UAE(アラブ首長国連邦)では、2021年10月1日~2022年3月31日にExpo 2020 Dubai(ドバイ万博)が開催され、2023年10月9日~13日にICA大会がドバイで開催されている。一方、IFLAは、2024年大会の開催を一度は決定したが、LGBTQ+の権利に関するアラブ首長国連邦の法的枠組みや、LGBTQ+関連のテーマがプログラムから除外される可能性についての懸念が表明され、参加者の約68%がドバイでの開催に反対票を投じたことなどから、2024年の年次大会は中止となった。ICOM大会でも一部の委員会でLGBTQ+関連の議論が抑制されるなど、言論の自由が保障されない場面が見られた。

ICOM大会は3年に1回開催され、第27回目となるICOMドバイ大会は、中東・北アフリカ・西アジアで初となる開催で、オンラインを含め4,500人以上、日本からは約40人が現地参加し、各国際委員会等で発表や意見交換等を行った。ドバイ文化芸術委員長のシャイフ・ラティファ妃殿下(ドバイ首長の娘)ら主催国の関係者は、UAEの文化的統一性を強調し、単なる概念ではなく実践としての文化外交の重要性について訴えた。

ドバイ首長国のシャイフ・ラティファ妃殿下

14日の総会では、ICOM日本委員会(委員長;青柳正則・山梨県立美術館長)とペルー国内委員会が提案した決議案「Empowering Future Generations through Intangible Heritage(無形文化遺産と記憶を通じた次世代の育成)」が採択された。また、次期ICOM役員(2025-2028)等の選挙結果が発表され、新会長にアントニオ・ロドリゲス氏(アメリカ)が、副会長にはナセル・アル・ダルマキ氏(UAE)及びタイーベ・ゴルナズ・ゴルサバヒ氏(イラン)が選出され、執行役員の一人に筆者が選出された。日本からの選出は、36年ぶり4人目で、ICOMOSにおける日本からの専門家の活躍に比べれば、まだほんの第一歩に過ぎないが、これから力の限り世界の博物館の発展に貢献したいと考えている。任期は3年、2期まで。

また、初のICOMサスティナビリティ賞が、バルバドス博物館・歴史協会及びセント・アンドリュース大学による共有の島物語イニシアチブ・プロジェクトに贈呈された。

なお、前回2022年のICOMプラハ大会では、ロシアのウクライナ侵攻に伴う文化遺産や博物館の被災や復興に向けたセッションが設けられるなど多くの議論があったが、ドバイ大会では、開催国の意向かどうかは不明だが、そのような機会が少なかったのは残念であった。ICOM日本委員会及び日本博物館協会は、全国から集められたウクライナの被災博物館や文化遺産の保全・復旧のための寄附金総額29,624,390円を、2024年11月22日にICOMウクライナ委員会に送金しており、この機会にICOMウクライナ国内委員長から感謝の言葉をいただいた。

次回ICOM大会は、2028年8月27日~9月1日にオランダ・ロッテルダムで開催予定。改定に向けて検討が進められている倫理規程(Code of Ethics for Museums)は、来年6月にICOM創立80周年を記念してパリで開催されるICOM総会で審議される予定となっている。

(国立科学博物館理事・副館長)