ICOMOS AGA 2024とICOMOS Scientific Symposium 2024の出席報告
ICOMOS AGA 2024とICOMOS Scientific Symposium 2024の出席報告
Report on Attendance at ICOMOS AGA 2024 and ICOMOS Scientific Symposium 2024
宮﨑 彩 Aya MIYAZAKI
2024年のICOMOS AGAは11月11日から13日まで、シンポジウムは13日から15日までの日程でブラジル・Ouro Preto市にて実施された。Ouro Pretoは世界遺産になっている金の鉱山の町であり、行政面でも地域の中心的な役割を担っていたことから、町の中に複数点在する教会は豪華なバロック様式が印象的な、坂の厳しいところであった。当初メキシコで開催することとなっていたが、その話が白紙になったことから、今回1年未満の準備期間でブラジル・イコモス国内委員会が主催することとなり、会議・シンポジウムの開催中も終始スケジュール、会場、内容が変更し、その情報を当日確認しながら対応することが求められ、スリリングな1週間であった。日本からは大窪健之理事と宮﨑彩が参加し、シンポジウムでの発表も行った。
3日間のAGA開催中は、同じ時間帯に複数の会議が実施されたため、会議場を移動しながらオブザーバー参加を行った。11月11日はISCからの発表があり、世界的にどのような動きが行われているかの紹介があった。まだ現時点ではワーキンググループだが、今後ISCになりうる動きが複数ある事もこの場で共有された。その後、リージョナルミーティングが行われ、APAでは2025、2026年度、当該地域における国際的なイベントが目白押しであることから、アジア大洋州地域をアピールする絶好の機会であることが強調された。私が担当している防災管理に関しては、APAでは災害が多いことから、どのようなキャパシティーが各地に眠っているのか、事例を集める必要性について話された。また、国際EPの集まりもあり、世界各国のEP代表がオンライン・オンサイトでつながって、自己紹介を行いながら、今後の共同プロジェクトの可能性についても話し合った。翌日のアドコム会議でも様々なテーマが話し合われ、いくつかのテーマ(例えばGlobal North, global South)では議論が白熱し、各国の立場の違いが明らかになった。
また、同時進行で様々なテーマに基づいたワークショップや説明会が実施された。2日間にわたりICOFORTメンバーによる文化遺産の防災ワークショップが現地の大学で行われたほか、3日目にはHIAの冊子をユネスコやIUCNとまとめたRichard氏によりイコモスのキャパビルプロジェクトについての説明があった。
私はシンポジウムで『Whose “Heritage” is International Conservation System Protecting?』というテーマで発表を行った。フランス語と英語のヴェニス憲章を比較し、その中で着目されている「人」の重要性を評価しつつ、実際の制度執行の上では「人」が排除されていることについて発表した。思いのほか多くの方から反響をいただき、とても良い機会となった。
場所柄、ラテンアメリカとヨーロッパからの参加者が多かったことから、ラテンアメリカ地域が一体となって新たな提言を作っている様子を知ることができたのも良い発見だった。アジアからの参加者は少なかったが、これから2年度のAGA、GAを開催することもあり、当該地域の結束力を確認できたのは心強い。APAから国際イコモスに向けて発信していくためにも、地域での協力関係を強化していくことは今後ますます必要になるだろう。
(AP地域日本EP代表)