研究会報告EP(若手専門家)委員会 オーセンティシティに関する連続研究会 第3回「文化観光におけるオーセンティシティとインタープリテーション」
研究会報告EP(若手専門家)委員会 オーセンティシティに関する連続研究会 第3回「文化観光におけるオーセンティシティとインタープリテーション」
Authenticity and Interpretation in Cultural Tourism
桑原 佐知子 Sachiko KUWAHARA
EP(若手専門家)委員会は、2023年11月18日、「文化観光におけるオーセンティシティとインタープリテーション」と題し、ハイブリッド研究会を開催した。これは、文化観光における歴史的資源の「保全」、「活用」及び「解釈」を職業とする専門家が、その資源の誤解を生まない「歴史的理解」を促進しながら、観光客が求めるものに対応するために、何を知り何をする必要があるのかについて考えることを目的としたものである。
研究会では、文化遺産の視点からのオーセンティシティについて、宗田好史教授(関西国際大学)より「ポスト・トゥルース時代の観光-嘘と欺瞞の文化遺産-」と題して、観光の視点からのオーセンティシティについては、池上重輔教授(早稲田大学経営管理研究科)より「観光の視点からのオーセンティシティ」と題した講演が行われた。宗田教授からは、ヨーロッパや京都の文化遺産の多様な事例をもとに、「文化遺産は歴史観に沿って、その時の権力者によって都合良く演出されてきた。そのため、『何が本物か』は、観光客が自分自身の目で疑う必要があり、観光客にはそれだけの教養が必要である」という主張がなされた。一方、池上教授からは、「真正性」ではなく「本物感」や「創発的なオーセンティシティ」といった概念が紹介され、ドバイを事例に、世界遺産のような真正な歴史や伝統が備わっていなくても「場所にストーリーを乗せて発信し、調和のとれた世界観を提供」することでオーセンティックな場所を構築する事ができると主張された。
ディスカッションでは、文化遺産と観光のオーセンティシティの考え方がかなり異なり、その違いや、それぞれなぜオーセンティシティが必要なのかをきちんと認識していくことがここからの良い(文化遺産側と観光側の)協働につながっていくのではないか、また、文化遺産のインタープリテーションを観光関係者とも共有・議論をしていく必要がある、などの意見が出された。