京都らしさを繋ぐ 重要文化財杉本家住宅の見学


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京都らしさを繋ぐ 重要文化財杉本家住宅の見学

Sugimoto Residence - Continuous Authenticity

ゲッペルト 堀内 絢子 Ayako GEPPERT-HORIUCHI

京都レポート2添付写真重要文化財杉本家住宅
重要文化財 杉本家住宅

今回のICOMOS EP「オーセンティシティに関する研究会」のテーマは「京都らしさとはなにか」ということを多方面から探るものであった。観光やまちづくりなど様々なアプローチのなか、杉本家住宅の見学は非常に心に残るものがあった。

建物そのものが持つ歴史やモノとしてのオーセンティシティ、空間によって構成される、いわゆる「文化財」としての杉本家「住宅」については言うまでもないが、それまでのご自分が住まわれていた住宅を文化財として一般に公開する「いえ」のあり方について、お話を伺った杉本様から大変興味深いお話を伺った。それは、建物を維持していくためには個人住宅としてだけではなく、「皆のいえ」としていくということである。文化財として公開される住宅には、既に住宅としての機能を失い、博物館的に残されているものもが多い。部材もよく残り、形式も往時のものをよく維持し、民家の変遷をたどる上で非常に重要な住宅であるものの、「住んでいる」感覚が乏しいと感じられることもある。しかし杉本家住宅ではお住まいになられているということも大きいが、実際の暮らしの雰囲気と言えるような空気感が公開されても維持されていた。部屋の使い分けや、床のしつらい、台所になにげなくおいてあるもの、今も使われている椅子や、帰りがけに聞こえたピアノの音、現在の生活が綿々と続いていた。その生活が「京都らしい」と言うのは簡単だが、しつらいに対する意識、行事と結びついた生活はとても「らしい」と感じた。

「オーセンティシティに関する研究会」を通して様々な分野のオーセンティシティとは何か、ということを考える機会が多い。そこで杉本家住宅の持つオーセンティシティについて考えみると、Form/design、Materials/substance、location/settingなど物質的側面に定義されるオーセンティシティの構成要素が担保されていることは明らかであるが、その「いえ」としての思いが、所有者のための住宅から「皆のいえ」となってもSpirit and feelingとして残るのではないか、そしてそれを支えるのが日々繰り返される営みによる「京都らしさ」ではないかと感じた見学であった。