WE ARE SITE MANAGERS 国際シンポジウム報告


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WE ARE SITE MANAGERS 国際シンポジウム報告

Report: "WE ARE SITE MANAGERS International Symposium"

岡寺 未幾 Miki OKADERA

写真2 シンポジウム会場St. Giles Wembley Penangでの集合写真
シンポジウム会場St. Giles Wembley Penangでの集合写真

We Are Site Manager 国際シンポジウムは令和6年 3 月 1 日〜 5 日の5日間、マレーシア・ペナンで開催された。世界遺産委員会のサイドイベントとしてこれまで5回開催されてきた世界遺産サイト・マネージャーフォーラム(世界遺産の保存管理に従事する実務担当者向けフォーラム)を契機としたものであるが、このシンポジウムは、サイト・マネージャーが主体となり開催した初の国際シンポジウムである。

会議には、世界37カ国から約160名のサイト・マネージャーや遺産専門家が参加した。参加者は、アジア・太平洋地域から12名、ヨーロッパ・北米地域から10名、アフリカ地域から4名、アラブ諸国から4名、ラテンアメリカ・カリブ地域から2名と広範な地域から集まっただけでなく、男女比が1:1と非常にジェンダーバランスもとれていた。

シンポジウムは20のセッションで構成されモデレーターおよびプレゼンターとして45人が登壇した。セッション内容は、世界文化遺産・自然遺産の保存管理に従事するサイト・マネージャーを取り巻く様々な状況、直面する困難や課題、機会やリソース、またアジア・アフリカ・ヨーロッパなどの地域別の状況等について多岐にわたるテーマで行われそれぞれ熱心な議論が繰り広げられた。

WE ARE SITE MANAGER 国際シンポジウムポスター

日本からはユネスコジャカルタ事務所の千葉茂恵⽒が「セッション11:私はサイト・マネージャーだった」のモデレーターを務めたほか、「セッション14:サイト・マネージャーのためのリソース、サイト・マネージャーとC2C(カテゴリー2センター) 」において公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所(ACCU奈良)の脇⾕華代⼦⽒とメラゼ・タマル⽒、アジア太平洋無形文化遺産研究センター(IRCI)の辻貴志⽒と野嶋 洋子⽒がその取り組みを紹介した。また、筆者もセッション8「アジアのサイトマネージャー制度」の中で、世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群についての事例報告を行った。

この会議の成果は、「ジョージタウン宣言GEORGE TOWN DECLARATION)」としてまとめられた。世界遺産を守るサイト・マネージャーは世界と地域をつなぐ重要な役割を担い、締約国のコミットメントを実行し、遺産が地域社会の持続可能な発展に貢献する一方で、日々課題に直面している。このことから、①サイト・マネージャーの意思決定プロセスへの関与、②世界遺産の保存管理システム開発についてサイト・マネージャーが重要な役割を果たせるようにすること、③サイト・マネージャーの声や懸念が世界遺産に関わる全ての関係者の間で共有・対処されること、④サイト・マネージャーの更なる能力構築、および⑤サイト・マネージャーのグローバルネットワークを構築することへの支援、を求めていくことが示された。

会議では、世界遺産ジョージタウンの視察も含まれ、半日という短い時間ではあったが、ヨーロッパ、中国、インド、マレーの融合した文化の中で、様々な文化的背景を持つ人々が共に生きる姿に触れることができた。多民族国家であるマレーシアを代表するジョージタウンで、文化の多様性を認め合う世界遺産のサイト・マネージャーにかかる初の国際会議が行われたことはとても意義深いと考える。

ペナン市庁舎での集合写真