パートナーシップ施設への旅:富山県 立山カルデラ砂防博物館
パートナーシップ施設への旅:富山県 立山カルデラ砂防博物館
New Partnership Member: Tateyama Caldera Sabo Museum
是松 慧美 Emi KOREMATSU
春には20mに迫る雪の壁が圧倒的な雪の大谷、夏には雄大な山岳景観と高山植物、秋には紅葉と、多くの人々が訪れる立山黒部アルペンルート。当館はこの玄関口である立山駅に隣接し、1998(平成10)年に開館しました。
立山カルデラは、立山黒部アルペンルートが通っている弥陀ヶ原台地のすぐ南にある火山活動と侵食作用がつくりあげた独特の自然景観をもつ国内有数の大規模崩壊地であり、立山の自然史を紐解くために重要な地域でもあります。また、カルデラ内に残る大量の崩壊土砂は大雨のたびに流れ出し、常願寺川流域にたび重なる土砂災害をもたらしてきました。立山カルデラでは、富山平野を守るために100年以上にわたり日本屈指の砂防事業が続けられており、2009(平成21)年には立山砂防の基幹である白岩堰堤は砂防施設としては初めてとなる国の重要文化財に指定されました。また、2017(平成29)年には白岩堰堤に泥谷堰堤、そして中流域に造られた本宮堰堤が追加され、「常願寺川砂防施設」として指定されています。
当館は立山および立山カルデラの自然や歴史、そこで行われている砂防について紹介し、自然環境保全や土砂災害防止に対する意識の向上に寄与することを目的としています。
常設展示は立山カルデラの自然と常願寺川の災害、そして治水の歴史を紹介する「立山カルデラ展示室」と、土砂災害の恐ろしさや立山で行われてきた砂防事業を紹介する「SABO展示室」の2つの展示室があります。展示では「崩れる」、「流れる」、「防ぐ」をテーマとして、立山カルデラを再現した大型地形ジオラマや安政の大災害をアニメーションで紹介する安政の大災害シアター、災害状況を記録した古絵図など、豊富な映像や実物資料、立体模型を用いることで分かりやすい展示を目指しています。
【立山カルデラ展示室】(有料ゾーン)
崩れる-大型地形ジオラマ-
このジオラマは立山カルデラ内の六九谷(1969年の崩壊によりできた谷)にある展望台から眺めた立山カルデラ内部の様子を再現したものです。1階から3階まで吹き抜けの直径12mのドーム型ジオラマは迫力満点。普段、工事関係者以外立ち入ることのできない立山カルデラですが、あたかも来館者自身がカルデラ内にいるかのような感覚にさせてくれます。ここでは荒々しい崩壊地立山カルデラを疑似体験することができます。
流れる-安政の大災害シアター-
展示室を進んでいくと大きな石が現れます。これは1858(安政5)年に起きた「安政の大災害」の際に土石流により立山カルデラから常願寺川下流へ流れてきた「大場の大転石(だいてんせき)」をイメージしたものです。実物よりもひとまわり小さいサイズで作られていますが、訪れた方々は石の大きさと、この巨石を押し流すほどの凄まじい土石流の恐ろしさに驚かされます。
大転石の裏には紙芝居風のシアターがあります。安政の大災害の体験をつぶさに書き留めた古文書「地水見聞録」を基に造られたアニメーションで、災害の全体像をわかりやすく紹介しており子どもから大人まで楽しめます。
【SABO展示室】(無料ゾーン)
防ぐ-トロッコツアーへようこそ-
この展示室で目を引くのは立山砂防のシンボルともなっている工事用トロッコの実車展示です。トロッコは1965(昭和40)年に千寿ヶ原から水谷平までの約18kmが全線開通し、人里離れた立山カルデラへ作業員やたくさんの資材を現在も運んでいます。
客車を模した3つのミニ展示室では、立山砂防の歴史を紹介しています。その中でも「トロッコツアーへようこそ」は、映像と震動によるトロッコの疑似乗車を体験でき、子どもたちに大人気のコーナーです。
また、立山カルデラは砂防工事が行われているため一般の方の立ち入りが制限されていますが、博物館では砂防工事を管轄する国土交通省立山砂防事務所の協力のもと、立山カルデラを野外ゾーンと位置づけ、公募により参加者を募った学習会を毎年7月~10月に開催しています。バスコース(往復バス)とトロッココース(片道バス、片道トロッコ)があり、実際に立山カルデラを訪れ、実体験を通して崩壊地特有の自然や砂防事業を学習できることで全国から参加者が集まる非常に人気の高いイベントになっています。
世界に誇る立山の大自然は私たちに恩恵をもたらしてくれますが、時には土砂災害や洪水などの怖い顔も見せます。
博物館では立山や立山カルデラの自然の美しさ、厳しさ、恐ろしさとともに人々が関わってきた歴史、そして砂防事業について広く紹介しています。
博物館で美しい立山のもうひとつの姿を知ってみませんか?